連載知財コラム
渡邊弁理士の知財よろず研究所
SSIP 誠真IP特許業務法人
弁理士 ジュニアパートナー
渡邊 裕樹 さん
(理学修士)
経歴:東京工業大学大学院
理工学研究科卒業(物性物理学専攻)
職歴:専門商社に勤務後、大手国内特許事務
所を経て現職
業務内容:機械・制御・電機分野の特許権、
著作権が専門
趣味:ギター・ドライブ
第二回 知財業界の動向とキャリアパス
新たな年度を迎えて、読者のなかには転職・異動で新たに知財業界の門戸を叩いた方々も少なくないのではないだろうか。巷ではアベノミクスに端を発した景気回復が企業の業績等に反映されつつあり、ひと時に比べて明るい話題が増えてきたようである。これからの知財キャリアを考えるにあたり、将来の動向を意識したキャリアパスを想定しておくことは重要である。
近年の知財業界は、小泉政権時代の知的財産戦略大綱に伴う弁理士の大幅増員、その後のリーマンショックの影響もあり、決して楽ではない時期が続いてきたのは記憶に新しい。かつての特許業界は、仕事量に対して実務者が極端に少ない高収益ビジネスであっただけに、将来に悲観的な意見も否定しきれない。事実、弁理士のような資格業は、不景気時に人気となる傾向があり、他業種ほど景気回復の恩恵を実感されていない方も多いかもしれない。しかしながら、昨今の動向を見るに、景気回復に伴う仕事量の回復や過剰人員の整理が進み、近い将来、知財業界にも本格的な回復の見込みが出てきたように思える。
隣の芝は青く見えるもので世の中で注目される業界は一見魅力的ではあるが、既に人材集中が始まっており、将来性が必ずしも魅力的とは限らない。ライバルが多ければ、将来的に成功する確率は低くなるからである。このような視点で見ると、現在の知財業界のポジションは、なかなかに有望ではないだろうか。一人ひとりが将来的に大きく成功する可能性を秘めている。
一方で、これからの時代は、近年の競争を生き残ってきた者同士の競争になるため、手放しに楽観できないことも忘れてはならない。まずは日々の業務を通じて十分な実務能力を身に着けることが先決ではあるが(もちろん筆者も例外ではない)、経験に関わらず、他者との違いをいかに出していくかに意識を向けながら、長期的なキャリアパスを描いていきたい。