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【第3回】勝手に貯まる!知的(に)財産(を築く)経営のススメ

弁理士 古志 達也 さん

弁理士・FP技能士・知的財産検定1級(特許)・ソフトウェア開発技術者等

経済学部でデリバティブ等の金融工学を学び、在学中に宅建資格を取得。卒業後に一部上場のシステム会社にシステムエンジニアとして勤務し、簿記・会計の勉強にも励む。

特許事務所に転職後、翌年の2004年弁理士試験に1発合格する。

2005年に26歳で独立開業し、講師業も開始。多数の受験生の指導に携わる。

特許、実用新案、意匠、商標、不正競争、著作権等の知財全般について実務を行うと共に、外国出願も手がけ

る。当事者系審判・訴訟も扱い、単独代理で、審決取消訴訟に勝訴できる能力も持つ。

特許の専門分野は、ソフトウェア・ビジネスモデル、通信等。

20代前半から、将来の早期リタイアの計画を立て、経済、経営、会計、税制等にも通じている。

 ~経営のご相談・お仕事のご相談等は、info@be-ambitious.jpまで~

【日本株は、『なぜ』上がるのか?日本株は、『バブル』なのか?(前編)】

 ~ 「発明」の定義を説明できない人が、「発明」の該当性を論じる不思議 ~ 

 1、 好調な「日本株」・『バブル』の懸念も出ているが

 まず、「日本株」の代表指数である『日経平均株価』の過去10年の推移(2005年5月~2015年5月)を確認しましょう(図1)。

 小泉政権(2001年~2006年)に「17,000円」程度、安倍政権(2006年~2007年)に「18,000円」程度まで上昇しました。

 福田政権(2007年~2008年)、リーマンショックを経て、麻生政権(2008年~2009年)に「7,000円」程度まで暴落し、民主党政権(2009年~2012年・鳩山、菅、野田)時代は「8,000円~11,000円」あたりで推移していましたが、安倍政権(2012年~2015年現在)では2倍程度の「20,000円」超えを果たしました。

 メディアでは、『バブルではないか』と指摘・懸念する声も出てきている状況です。

(図1)

 2、 株価等の資産についての、『バブル』の定義は?

 『発明』の定義・解釈が定まらなければ、何が『発明』であるか、判断できません。

 同じように、株価等の資産についての『バブル』の定義は、いったいどのようなものなのでしょうか?

 

 2013年にノーベル経済学賞を受賞されたユージン・ファーマ教授は、授賞式前のストックホルム大学での講演で、「人々が『バブル』という言葉を使う時には、それが何を意味しているのか決して言わない」との趣旨の発言をしました。

 これを受けて、おなじく、同年に同賞を受賞されたロバート・シラー教授は、(自身の見解として)「『バブル』は、資産価格が投機的になることだ」との趣旨の発言をしました。

 つまり、ノーベル経済学賞を受賞されるような経済学者でも、『バブルの定義』は難しく、『数量的基準でバブルを定義』していません。

 それでは、株価について、「投機的になる(バブルになる)」とは、どのような数値を基準に判断すればよいのでしょうか?

 

 (注)経済学における他の『バブル』の定義として、「ファンダメンタルズ価格(理論価格)と、実際の価格との差・乖離(上昇部分)」というものもあります。

 しかし、この定義も、どの程度、理論価格から乖離・上昇が生じると『バブル』の状態であるか示しておらず、『数量的基準でバブルを定義』していません。

 3、 (一株あたり)株価 = EPS(一株あたり利益) × PER(株価収益率)

 一般的に、株価の「割安」、「割高」を判断するには、「株価」を、「EPS(一株あたり利益)」×「PER(株価収益率)」に分解する手法があります。

 

 例えば、以下のような上場企業Aが存在したとします。

(1)「現在の株価:200円」 (2)「発行済株式総数:100万株」 (3)「1年間の利益:2,000万円」

 

 「EPS(一株あたり利益)」は、「1年間の利益:2,000万円」÷「発行済株式総数:100万株」で求められますから、EPSは「20円」です。

 (一株あたり)「現在の株価:200円」=「EPS(一株あたり利益):20円」×「PER(株価収益率)」、ですので、PERは「10倍」であると計算できます。

 よって、この企業の株価(200円)は、『株式市場で「EPS(一株あたり利益):20円」の10年分の評価「PER(株価収益率):10倍」がされている』という事が分かります。

 つまり、毎年「20円」の利益を稼ぐ(EPS)と仮定したならば、初期投資額(株価)の「200円」を、「10年間(倍)」で回収できる(PER)、ことを意味します(年利回りでいえば10%)。

 弁理士は、職業柄、法律や技術に詳しい方が多いです。

 一方で、経済、経営、会計、税制等には、専門外でよく分からないという方が多いです。

 本コラムでは、知的(に)財産(を築く)ために、一般的に弁理士が苦手としているこれらの分野についての情報を提供致します。

 今回と次回は、知的に財産を築くために必要となってくる『株式』の基礎知識について、15年ぶりの株高で好調な「日本株」が『バブル』の状態にあるのかも含め、解説していきます。

 4、 一般的には、PER(株価収益率)が「低いと割安」・「高いと割高」だが・・・

 上記の上場企業Aの株価が「200円」から「100円」に下落すると、「現在の株価:100円」=「EPS(一株あたり利益):20円」×「PER(株価収益率)」、つまり、PERは「5倍」で「割安」だと判断できそうです。

 

 しかし、もしかすると、上場企業Aの業績の急激な悪化により、来年以降の「EPS(一株あたり利益)」が悪化し、「10円」や「5円」、下手をすると赤字になりそうだと、多くの投資家に予想されて売られた結果、株価が下落しているのかもしれません。

 その場合、「現在の株価:100円」=「EPS(一株あたり利益):5円」×「PER(株価収益率)」ならば、PERは「20倍」ですので、下落した株価でも、まだまだ「割高」です(表1)。

 

 逆に、上記の上場企業Aの株価が「400円」に上昇しても、業績の急拡大により、来年以降の「EPS(一株あたり利益)」が、「50円」や「60円」に改善すると見込まれているならば、上昇後も「割安」だといえます(表1)。

 ※「現在の株価:400円」=「EPS(一株あたり利益):50円」×「PER(株価収益率):8倍」

(表1)

 5、 「EPS(一株あたり利益)」は、「将来」の「予想EPS」が重要

 つまり、企業の業績により「EPS(一株あたり利益)」は変動しますので、現在の「株価」だけでは、その株価がEPSに対して、「割安・妥当・割高」のどの水準にあるか分かりません。

 「株価」と「EPS(一株あたり利益)」が分かれば、「PER(株価収益率)」により、その株価の「割安・妥当・割高」が判断できます。

 そして、「EPS(一株あたり利益)」については、過去の話よりも、将来の稼ぐ力が重要ですから、今期以降についての「予想EPS」が重視されます。

 ※個別企業の株で利益を出すのが難しいのは、将来の「EPS」の予想が難しいからです。

 

 身近に感じて頂くために、知財業界の方に馴染みが深い、国内の特許出願件数が多い上場企業の一部について、「株価」、「予想EPS」、「予想PER」の関係の実例をご紹介致します(表2)。

(表2)

※本コラムは、知財業界の方々に経済、経営、会計、税制等の情報提供を行う目的で作成したものであり、投資勧誘を目的に作成されたものではありません。

※本コラムの作成にあたり、筆者は情報の正確性等について細心の注意を払っておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。

※本コラムに記載した筆者の予測、予想、意見や、税制等は、本コラムの作成日現在のものであり、今後予告なしに変更されることがあります。

日経平均株価・2~3ヶ月・簡易予想

 【2015年5月23日時点での予想】

 2015年6月~7月のどこかで直近高値をつけ、1ヶ月程度の期間をかけて、

 日経平均株価で2000円~3000円程度の大きな下落が起こる可能性があります。

 十分、ご注意下さい。

 ※前回(前月号)の予想を維持していますが、各種指標を見て、1~2ヶ月後ろにズレました。

 ※なお、筆者自身は、短期的には大きな下落を警戒していますが、ここ半年位は、保有資産のかなりの部分が日本株です。

 ※最終的なご判断はご自身でお願い致します。

 次回(来月号)の本コラムでは、上記説明した「EPS(一株あたり利益)」、「PER(株価収益率)」の2つの概念を利用して、「日本株は、『なぜ』上がるのか?日本株は、『バブル』なのか?」について説明します。

以上

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